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大阪高等裁判所 昭和35年(ネ)677号 判決 1962年12月27日

判   決

第五二六号第五二七号事件控訴人

(以下単に控訴人と肩書を略称)

石川俔二

第五二七号事件控訴人

第六七七号事件被控訴人

(以下単に控訴人と肩書を略称)

江商株式会社

右代表者代表取締役

藤田亀太郎

右両名訴訟代理人弁護士

浪江源治

第六七七号事件被控訴人

(以下単に訴控訴人と肩書を略称)

山石紙業株式会社

(変更前の商号カネモ商事株式会社)

右代表者代表取締役

石川久弌

右訴訟代理人弁護士

立入庄司

浪江源治

第五二六号事件被控訴人

(以下単に被控訴人と書肩を略称)

後藤フサ子

前同

後藤兼光

第五二七号事件被控訴人

第六七七号事件控訴人

(以下単に控訴人と肩書を略称)

後藤典一

右法定代理人親権者父

後藤兼光

同母

後藤フサ子

右三名訴訟代理人弁護士

長嶋隆茂

主文

控訴人等の本件各控訴はこれを棄却する。

本件各控訴費用はそれぞれ当該控訴事件の控訴人等の負担とする。

事実

第五二六号事件控訴の趣旨

「原判決を取消す。

被控訴人後藤フサ子は控訴人石川俔二に対し原判決添附別紙目録記載の建物を収去して同目録記載の土地を明渡せ。被控訴人後藤兼光は控訴人石川俔二に対し右建物より退去して右土地を明渡せ。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」

第五二七号事件控訴の趣旨

「控訴人江商株式会社勝訴部分を除き原判決を取消す。

被控訴人後藤典一の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」

第六七七号事件控訴の趣旨

「控訴人後藤典一勝訴部分を除き原判決を取消す。

被控訴人江商株式会社は控訴人後藤典一に対し原判決添附別紙目録記載の土地につきなされた神戸地方法務局昭和三〇年一一月一六日受附第一八一九六号原因昭和三〇年一〇月一〇日譲渡とする一番根抵当権移転登記の抹消登記手続をせよ。

被控訴人山石紙業株式会社は控訴人後藤典一に対し右土地につきなされた神戸地方法務局昭和二九年一二月二九日受付第一九二六八号原因昭和二九年九月一日契約とする根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」

上記各事件の答弁の趣旨

「本件控訴を棄却する。」

当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、以下に補充する外、原判決事実記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

証拠(省略)

理由

控訴人石川俔二、同後藤典一の各本訴請求に対する判断は、以下に補充する外、原判決各理由記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

第五二六号事件原判決五枚目裏第九行目及び第五二七号第六七七号事件原判決(昭和三二年(ワ)第八三三号事件)八枚目表第一四行目の「右登記だけでは」を「原審及び当審での被告(被控訴人)後藤兼光本人尋問の結果によれば、右登記(昭和三〇年四月一一日受付所有権移転登記も同様)は控訴人後藤典一の親権者後藤兼光が約諾した根抵当権設定登記手績のため松田知司法書士に自己及び同じく親権者である妻フサ子の実印を必要書類の作成を依頼する趣旨で交付したところ、予め受けていた石川三郎からの指示により、その依頼の趣旨を、根抵当権設定登記のほかに同根抵当債務の不履行を停止条件とする代物弁済予約に基く所有権移転請求権保全の仮登記及び右条件成就の場合の所有権移転登記に必要な書類の作成方を委嘱されたものと信じた同司法書士により右実印を押捺して右親権者等不知の間に作成された書類によつて右親権者等不知の間になされたものであつて、後藤典一の親権者の意思に基く申請によりなされたものでないと認められる(この認定に反する原審での被控訴人山石紙業株式会社代表者石川三郎本人の供述((第一、二回))と当審証人石川三郎の証言は信用できない)から、右登記によつては」と訂正する。

当審証人石川三郎、同松田知の各証言及び被控訴人後藤兼光本人の当審供述中、上記引用の判示事実に反する部分は信用し難い。

第五二七号第六七七号事件原判決七枚目裏第七行目の「原告の」以下第八行目の「までもなく」を削り、同第七行目の「したがつて」の前につぎのとおり加える。

「つぎに、民法第八二六条違反の主張について判断する。

親権者の債務について子の財産の上に抵当権を設定する契約は、同条所定の親権者と子との利益相反行為に該当するが、第三者の債務について子の財産の上に抵当権を設定する契約は、(右債務について親権者が連帯債務保証債務等を負担している場合は格別)同条所定の親権者と子との利益相反行為に該当しない、と解するのを相当とする。

これを本件についてみると、上記認定によれば、本件根抵当権設定契約は、原告(控訴人)後藤典一の親権者の債務についてなされたものでなく、訴外篠原紙業株式会社(後藤典一の親権者母後藤フサ子の弟が代表取締役をしている会社)の債務についてなされたものであるから、本件根抵当権設定契約は同条所定の親権者と子との利益相反行為に該当しない。

よつて、原告(控訴人)後藤典一の同条違反の主張は採用できない。〕

よつて、控訴人等の本件各控訴を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第八民事部

裁判長裁判官 石 井 末 一

裁判官 小 西   勝

裁判官 中 島 孝 信

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